「男か女かはどっちでもいい」一魚一会の物語
男か女かはどっちでもいい
映画の冒頭
スクリーンにこの言葉が映し出され、水槽の魚のアップからストーリーが始まります。
のん(能年玲奈)が主演で、沖田修一が監督する作品🎬
さかなクン のエッセイ『一魚一会』を題材にした映画
【さかなのこ】
を観てきました。
皆さんは、さかなクン についてどういう印象を持っていますか??
私は、最初はさかなクンの事を色眼鏡で見ていたような気がします。
でも、ある時からピュアで真っ直ぐな人柄に気付いてファンになり、気が付いたら尊敬する人になっていました。
さかなクンが魚類学者として沢山の成果を出していることは、広く知られていると思います。
さかなクンは『さかなクン』であって、何かのキャラクターのように定義付けるのはナンセンスです。
そんな『さかなクン』を、のんが演じるというので興味を持ち、サブスク解禁…とかお寒い考えは捨てて、チケットを買ってシアター鑑賞をしてきました。
ネットでは「感動しました!」「涙が止まりません」という言葉で溢れているヒューマンコメディな作品という評価になっています。
私もこの作品を観て感動したし、心がジーンとして温かい気持ちになりました。
さかなクン(本作品中では「ミー坊」という名前の人物になっています)の素直な心や生き方、周りの友人に与える影響と変化、家族の愛、挫折と成功、そんなストーリーが139分の上映時間の中でゆっくりと描かれています。
普通に感動するドラマとしても面白いのですが、
「さぁ、皆さん!これからこのシーンで感動してもらいますよ!」みたいなお涙頂戴の演出などは特に無く、最初から最後までスローなテンポでゆるく進んで行くのに、なぜか心に沁みてくるんですよね。
感動ポルノという言葉もあるように、人の心を無理やり動かそうとしてくる作品には好き嫌いのアレルギーを発症することがあります(個人の感想)。
「さかなのこ」は、観る人にとって印象が変わる作品です。
話の土台はさかなクンの半生を書いた自伝ですが、中身はコメディーだし、ファンタジーな描写が差し込まれていたり、主人公の目線でストーリーを追う要素もあれば、親や友人から見るミー坊(のん)のお話でもあります。
人が大怪我をしたり、亡くなったり、絶望の淵に叩き落されたり・・・といったようなドラマチックな演出はありません。
細かく見ていくと両親が別居していたり(離婚したのかな?)、幼馴染がゴールフレンドと喧嘩別れをしていたり、裏側でドラマチックな展開は起きている雰囲気はあるのだけれど、ミー坊からの視点ではその辺の詳細は見えてこなくて、映画の中でも意図的にカットされているのです。
始まりはマー坊が小学生の頃。
魚好きのルーツは蛸との出会いだったエピソードから進んで行きます。
昭和50年代のノスタルジックな雰囲気・衣装・ヘアメイクを見て、自分の幼少期のアルバムで見た景色を思い出しました。(15mmのフィルムで撮影しているらしく、画の質感も懐かしさを感じさせてくれたのでしょう。)
CGで描かれた蛸のニュルニュル
テクノロジーをそこで使うのね(笑)という心の突っ込み。
そう思っていたら小驚きなオモシロ展開が待っていました。
優しくて憂いがあって、ミー坊の有りのままを受け入れて育てていく “覚悟” を感じさせる母親。
母親役・井川遥さんのこの写真がある展開の伏線になっております。
「お魚博士になりたい!」
という強い想い・・・
果たしてそれが仕事として成立するのか?
周りの友達は疑問に感じたり、中には嘲笑する人もいるのですが、純粋なミー坊を次第に受け入れるようになって行って、そのままの心でミー坊は成長していきます。
このドラマの見どころの一つが、味わい深くて個性的なマー坊を囲む友人たちです。
昭和60年くらいの千葉県 海沿いの町ですから、学校はヤンキーばかり(笑)
笑えるくらい頭が悪そうなヤンキー達とも次第に友達になって、彼らの人生にミー坊が影響を与えていくのですが、ドラマチックな事は特に起こらずに、穏やかに時間が流れていく中で話が展開していくのはちょっと笑えて、後から心が温かくなってきました。
幼馴染の日吉君(ヒヨ)を柳楽優弥さんが演じていて、高校生になった時にはしっかりヤンキーになって「狂犬」と呼ばれています(;’∀’)
そんなヒヨが、こんな事してたらダメだなぁと発起して勉学に励み、社会人になった時に立派に出世してるシーンがあるのですが、ミー坊と再会して話をしている時の眼差しや表情で、子供の頃から変わっていない二人の関係や想いを表現していて、味わい深さを感じました。
そして、この映画を観に行こう!と思った一番の動機になったのは、井川遥さんが演じるお母さんの姿勢が素晴らしい✨という評判を耳にしたからです。
子供の個性や性質をありのまま受け入れて、優しく見守っていく事は理想ですが、実際にやるのはとても大変だと思います。
自分が子育てをしていく中で、子供たちの個性や意思をどうやって尊重していくかを日々考えていました。そんな中で、さかなクンという存在を通して学びが得られたらいいなと期待して本作を観たのですが、予想をしっかり超えて素敵な作品でした。
〇〇みたいな映画だよね!とカテゴライズできない映画です。
ありのままを素直に受け止めることが出来れば素晴らしい作品だと思います。
さかなクン本人も「ぎょぎょオジサン」としてがっつり出演していて、お魚博士として認められなかったバージョンのさかなクンのパラレルワールドを見ているような雰囲気もあります。
事実ベースのドラマだけど、10%はファンタジー。そして20%くらいゆるりとコメディ。
テーマ曲もありのままをネオカワイイ!!と表現しているバンドのチャイが担当しています。
これがまた良いんです♪カッコイイ!! フェスで聴きたい👂✨✨
20年前 世界の一つだけの花がヒットして、ナンバーワンよりオンリーワン!が心に響いた時代でしたが、アナ雪以降は「ありのまま」でOKというのが時代の空気なのかもしれないですね。
とても素敵な映画です。
色々な評論家の方も絶賛していました。
私の好きな岡田斗司夫さんも90/100点 以上は確実!と太鼓判を押していました👏
純粋無垢だあるが故の残酷性や、社会のダークサイドもチラっと垣間見えていたり、ミー坊の全てを受け入れ過ぎている母親の甘やかしや社会的に危険だと思われる部分にマイナスの引っ掛かりがあったというレビューも見ました。
それでも、きっと95%の方にとっては温かくてハッピーな物語に映ると思います!
一人でも多くの方にこの作品やさかなクンや、この映画で演じている役者さんたちの魅力が伝われば嬉しいです。
《秋休みのお知らせ🍁 10/6(木)~10/9(日) の4日間をサロン休業にさせて頂きます。》
追記
本作品で脚本を務めている前田氏が、2022年5月からセクハラ・パワハラについてのトラブルを抱えていることを、こちらのブログ記事をUPした後にラジオを通して知りました。10月現在も告発された女性や、過去に似たような被害を受けたと名乗りを上げた方との和解は進んでいません。配給会社や映画製作側から具体的にこの問題をどう捉えているかという声明も無いので、脚本家と映画作品をどう結び付け、どう切り離していくべきかもまだ判断がしかねる状況です。この作品における会話やストーリーの脚本は素晴らしく、どんな問題があったとしてもその評価は変わることはないと思います。映画は脚本家だけで作られるものでも無いですし、同じ脚本でも演じる役者や演出で印象はガラッと変わります。なので、脚本家個人と映画の評価をストレートに結びつけるのは危険だと思うのですが、それでも今のトラブルの内容がとてもセンシティブなものなのは事実で、容易に見過ごすことは良くないとも思います。もし告発内容が事実で、前田氏がクロだったとしたら個人として厳正に対処されるべきです。そいいった事を前提に捉えても、この映画自体はとても素晴らしく、多くの人に見てもらいたいと感じたので、当ページの記事は非公開にせず、そのまま載せさせて頂きます。